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井浦新が『最愛』撮影後に伝えるつもりだった本音 加瀬が持つ“最愛”の形とは? - リアルサウンド

 12月10日、第9話を迎える金曜ドラマ『最愛』(TBS系)。15年前から現在へと続く連続殺人の謎と、関係者の愛が渦巻く極上のサスペンスラブストーリーが、いよいよクライマックスを迎えている。

 なかでも注目を集めているのが、主人公・梨央(吉高由里子)をどんな手段を取ってでも守ろうと奮闘する弁護士・加瀬(井浦新)の存在だ。第8話では「なんでいつも味方でいてくれるの?」「嫌にならない?」と問う梨央に「ならない。何度も言うけど家族だと思ってる」と答えていた加瀬。そして「世界がいいほうに変わっていくのを見たい。そう思って同じ舟に乗った」と続けるシーンが印象的だった。

 血のつながらない家族として、世界を変える力を持つ梨央の1番の理解者として。梨央との関係性に生きる意味を見出す加瀬を、井浦が繊細に演じている。そこで井浦に、残り2話で明確になってきた加瀬という役の人となり、加瀬を演じる面白さ、そして共に演じてきた吉高や松下洸平に対する想いについて聞いた。(佐藤結衣)

加瀬を「人間にしたい」という強い思いがあった

――あまりにも梨央にやさし過ぎて巷では「逆に加瀬さんが怪しいのでは?」という声も聞こえてくるのですが、演じられている井浦さんとしては、どのように感じられていますか?

井浦新(以下、井浦):加瀬に関しては、撮影が始まる前から新井順子プロデューサー、塚原あゆ子監督に言われていた「常に梨央にやさしく寄り添う」という点をブレずに徹底していくことを大事にしてきました。

――第3話のモノローグでは真田ファミリーという“家族“に対する想いを、しっかりと語っていましたね。

井浦:加瀬は良くも悪くも、シンプルなマインドの人だと思っていて。ただひたすら真田ファミリーを支えていく、梨央が見ようとしている景色を共に見たいという想いだけというか。大切なものにかける情熱は確かにあるんですけど、加瀬の育った環境からなのか、それを表に出していくタイプではなくて。ある意味で大輝(松下洸平)とは対極なキャラクター像だと思います。

――想いのシンプルさゆえに、梨央に見せる甘い顔や、大輝に見せる警戒した顔、後藤専務(及川光博)に見せる厳しい顔など、加瀬の様々な表情に見応えがあります。

井浦:実はそこが1番楽しいところです。塚原監督とも「梨央に優しく寄り添い続ける」というキーワードを大切にしすぎると、「役の輪郭がイメージに収まってしまいかねない」と話していて。なので、あえて「加瀬ならこういう言葉は使わないんじゃないか」とか「加瀬はこういう動きはしないんじゃないか」という言動にトライしてみたり。描かれてはいないけど、加瀬だって、それなりに恋愛をしたり人生経験もしてきただろうし、一面的ではないはずなので。加瀬をちゃんと「人間にしたい」と思って演じていきました。

――例えば、どういった場面で「加瀬らしさ」の枠を広げるトライをされたのでしょうか?

井浦:加瀬らしさ=丁寧で、真田ファミリーに忠実な執事のような言動をイメージすると思うんです。きっと政信(奥野瑛太)に対しても真田ファミリーの大切なひとりとして、弟のように守ってあげたいという気持ちもあるから、政信が突っかかってくる場面では、家族としての人生の先輩というか、兄のような顔で受け流していくようにしました。梨央に対しても、仕事上は敬語だけどタメ口が出てきたり、部下と友だちの間を行ったり来たりしてみたり。やりすぎたときには監督が「もっと抑えよう」と手綱を持ってくださったので、僕としてはのびのびと加瀬がイメージの枠にはまらないように、ギリギリのラインを探ることを楽しめました。

加瀬の“最愛”は多くの人が持っているものと同じ

――登場人物たちの最愛のものが物語のキーとなってきますが、加瀬の“最愛”をどう見ていらっしゃいますか?

井浦:梨央との関係は15年以上も経っているんですけど、加瀬にとって“最愛”は変わっていないんだなと思いました。きっかけは梓さん(薬師丸ひろ子)に「うちの娘を任せたわよ」と言われたからかもしれないですが、加瀬にとって家族の形というのは、血が繋がっている/いないじゃなくて、そういうものを超えたところにある。その家族というものへの最愛という形が、だんだんと明確になってきたなと感じています。逆に言うと、それ以外は本当にないんです。

――「それ以外、何もない」というのは、後藤専務のセリフにもありましたね。

井浦:加瀬は意外と図太いというか、後藤さんほどの繊細さは持ち合わせてはいないと思うんです。きっと後藤さんは、公園の芝生の上で寝っ転がったりはしないでしょうけど、加瀬は寝っ転がれちゃうんですよね。どんなに梨央社長が自由奔放で振り回されて「大変だな」とは思っても、加瀬は鼻血を出さないですし(笑)。

――たしかに(笑)。どんなに梨央が言うことを聞かなくても、そこまでダメージは受けてないですね。

井浦:加瀬って割と一般的にいる人なんじゃないかなと思うんです。マンションの隣に住んでいてもおかしくないし、ランチ時にオフィス街を歩いていても違和感がない存在というか。逆に、後藤さんがいたらきっと浮きまくると思うんですよ。特別な能力や、強い個性があるわけではなく、サイコパスな人でもない。そういう人が持つ“最愛”の形はどのくらいの強さなのか、楽しみではありますね。もしかしたら加瀬の最愛は、強弱こそあれど実は多くの人が持っている最愛と近いんじゃないかなって。わからないですけど、第9話と第10話でテーブルひっくり返されたらすみません(笑)。

――視聴者のみなさんの中には「井浦さんは地で加瀬なんじゃないか?」という声もありましたが?

井浦:どうも、地が加瀬の井浦新と申します。そうです、加瀬に関してはお芝居していないです。このドラマはドキュメンタリーです。

――まさかのノンフィクションだったとは(笑)。

井浦:でも、場外乱闘というか、SNSを通じて物語だけじゃなくて、作品をとりまくものをひっくるめて楽しんでくださっているのは本当にありがたいです。ドラマとして仕上がった映像が、台本を最初に読んだ感覚を毎回超えてくるので、僕も、オンエアのタイミングでは視聴者のみなさんと同じように楽しんでいるんですよ。自分が読んでいた大輝のセリフも、洸平くんが大輝として思いを乗せたひとことになったとき「こんな言い方になるのか」とか、「梨央はこんな顔でこのセリフを言うんだ、意外だな!」なんて驚かされて。そんなフレッシュな気持ちをそのままSNSでつぶやいたり、洸平くんとやりとりしたり楽しませてもらっています。

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